ゼロ秒トレーニング
序章 なぜ筋肉は縮み、痛みを発するのか
筋肉が縮み、こわばり、固くなる原因は主に3つあります。
1つは同じ姿勢を取り続けること、座りっぱなし、寝たきりも同様です。
1つは同じ動作を繰り返すこと、仕事、スポーツも同じです。立ちっぱなしも同様。
1つは、脳神経系の病気によるもの。脳から筋肉への指令が伝わっていない場合です。
ただ、どんな方も原因が1つだけという人はあまりいません。つまり上記の3つの原因のいずれも少しずつあるということです。
では、それをどのように改善するのか?
そこで多くの方が、ストレッチと筋トレをしましょうと言います。
しかし、本当に効果がでていますか?また継続できていますか?
通常の筋トレで鍛えられるのはアウターマッスルという筋肉群です。しかし、関節のこわばりや、痛みを発する原因となっている筋肉群にはインナーマッスルというものが大きく関わっているのです。
インナーマッスルは別名を「姿勢保持筋」といいます。
その筋肉群がこわばり、機能しなくなるとアウターマッスル群に負荷がかかり、また関節に痛みを生じます。
ではインナーマッスルを鍛えるためのストレッチと筋トレをしなければならないのか?
ゼロ秒筋トレの考えではインナーマッスルを鍛える方法は、「力を抜くことが必要となるので、通常の筋トレは逆にやらない」、「ほぼ日常動作でOK」が基本となっています。
また、続かなければ意味がありません。
ゼロ秒筋トレでは「器具を使わない」「特別なトレーニング時間を必要としない」、つまり場所と時間を選ばない、日常がそのままトレーニングになることを目指しています。
だからゼロ秒筋トレなのです。
ゼロ秒筋トレ実現の前に、10秒筋トレの練習課程(重要!)
「筋力トレーニング」は本来、西洋体育として発展したものでした。負荷をかけ、筋肉を太く強くし、多少体が歪んでいても、動きが非効率的であっても、筋力で補おう、その筋力を増やそうというもの。根底には自然の力(=重力)に抵抗するために、強い筋肉を「増やせばよい」「大きければ良い」という考えが存在します。それは自然を征服しようという考えに繋がっているような気がします。
対して、10秒筋トレは同じ「筋トレ」の名称を用いていますが、その内容は東洋体育の概念から始まっています。その根本は自然の征服ではなく、自然との調和です。
ですから東洋体育では「ひたすら増やす、強くする」という考えはありません。
西洋体育による筋トレは、ある意味では楽です。重りをつけて一定動作を繰り返せば、筋肉が太くなる。利点として、その効果は誰でも同じように短期間で現れてくることが挙げられます。ただ、トレーニングはひたすら続ける必要があり、止めれば筋肉もまた細くなってしまうこと。また負荷をかけるために怪我が多いのも欠点となります。
対して東洋体育による筋トレは、体に自然な動きを覚えさせることによって、動きの効率化(省エネ化と言っても良い)を図ることにあります。
それは脳―神経系の訓練であるとも言えます。
利点として、一度体が覚えてしまうとトレーニングを止めても元に戻ってしまうことがないということです。
ただ、自然と体の調和を自得する必要があり、修得にも時間がかかります。
東洋体育(10秒筋トレ)で言う、自然との調和とは、具体的には「重力」との調和のことです。もっとも身近な自然の働きである「重力」は時として、体の重みを発生させ、関節に負担をかけ、血液の流れを停滞させます。ですが、その重力に逆らうための筋力をつけるのではなく、逆に重力に対して、自然に立ち、動く方法を身に着けることが東洋体育です。
それは自然との共存共生と言い換えてもよいと思います。
自然な動きとは長年、無理な動きの癖がついている関節や筋肉に滑らかな動きや、自然な位置、角度を覚えてもらうことです。
東洋体育は、日本古来の自然観に根付いた感覚から発展した運動法でもあります。
その動きは、なんらかの芸事に熟練した動きを見せる名人、達人の動きであります。
ただ、達人(100点満点)を目指すとたいへんなので、「10秒筋トレ」では日常動作のプチ名人(50点くらい)を目指すことにします。
ほとんどの痛みは不自然な動きを修正することで解消できます。この10秒筋トレを通じて、日本古来の自然観を自身の体で学んでください。